「漫画」だからこそ、サクっ!と読めて、ギュっと心を掴まれる
「エルメスの道(竹宮恵子著)」は、誰もが知るファッションブランド「エルメス」の創業物語です。
この本の良いところは、「漫画」であることです。
漫画で描かれているので、ストーリーが頭に入りやすく、1時間程度でサクッ!と読めます。
たかだか1時間程度でこんなに濃い情報を知ることができるなんて…。
間違いなく優れてコスパの高い名著です。
普段読んでいるビジネス本の多くは、読み飛ばすページもありますが、「エルメスの道」は全てのページ読みました。
漫画だからといって甘く見てはいけません。
私は「エルメスの道」を読んで、エルメスの技術と職人への想いを知り、ギュっ!と心を掴まれました。
ここの詳しいエピソードは後述したいと思いますが、エルメスというブランドが、長い間、たくさんの人を魅了できているのには、理由があったのです。
「エルメスの道」のおかげで、「成功している会社には隠れた共通点があるはず!」という視点が私の中で生まれ、他社の創業物語も知りたくなりました。
この本は、私の中で「愛され続ける企業のあり方の基準」になると思います。
「エルメスの道」で感じた価値
私はこの本を読んで、いろんなことを感じましたが、今回は2点に絞ってお伝えしたいと思います。
- 長年愛される企業ブランドの秘訣が分かる
- 企業の見方が変わる
1.長年愛される企業ブランドの秘訣がわかる
「エルメスの道」を読んで、エルメスの歴史を知ることができました。
現在では、エルメスといえばファッションブランドというイメージがあるかと思いますが、エルメスはもともとは馬具の製造をしていました。
そして、他の誰よりも丁寧な仕事をしていたのがティエリ・エルメス(初代エルメスの社長)でした。
いいものを作るために、馬にも優しい馬具に徹底的にこだわり、周りから信頼を得ていきました。
はじめは下請けで製造していましたが、徐々に指名が入るようになり、直接顧客を持つようになっていきます。
初代エルメスは、心の底から職人でした。
2代目のシャルル・エミール・エルメスは、職人としての腕もありながら、商売人としてのセンスも兼ね備えた人物でした。
父である初代エルメスを尊敬し、高品質な商品を作りながら、時代の流れを読み、新しい取り組みを仕掛けられる万能人間。
この時代に、現在のエルメス本店があるパリ8区フォーブル・サントノーレ通り24番地へ工房を移転しています。
3代目のエミール・モーリス・エルメスは、営業・接客・マーケティングの天才で、エルメスを飛躍させたミスターエルメスと呼ばれている人物です。
自動車の発展を目の当たりにし、早くから馬車の衰退を予見して、事業を多角化へ運んでいきました。
「なんとかして職人たちの技術を失わずに、事業を継続する方法はないか?」と考え抜き、革製のバッグや時計、ベルトなど、次々とヒット商品を生み出していきました。
私がエルメスの物語を読んでいて、心打たれたのは「自分たち(経営側)だけが儲かれば良い」という考えが全くないことです。
常に職人を尊敬し、職人の技術を活かすための道を考え続けていました。
こんなエピソードがあります。
1929年の世界恐慌のあおりを受け、エルメスも倒産の危機に追いやられてしまいました。
そのとき、エルメスを救った人物は、エルメスの職人・業者たちでした。
これまでエルメスに恩を感じていた職人たちが「3年間給料の支払いを待つ!」と申し出てくれたんです。
この職人たちの申し出のおかげで、エルメスは世界恐慌の中でも倒産することなく、復活をとげることができました。
ポイント
- いいものを作りたいという想いがあり、それをぶらさずに続けている
- 経営者は職人を尊敬し、職人は経営者に感謝しているという関係性
- 時代の変化に伴い、技術を活かしながら新しいことへ臨機応変に対応している
2.企業の見方が変わる
企業の歴史を知る、というのは面白いですね。
私は「エルメスの道」を読んで、エルメスというブランドが好きになりました。
正直、この本を読む前では「エルメス」 = 「高級ブランド」 = 「自分には関係ない」 という感じで、興味すらありませんでした。
むしろ「高いものを売って儲けている会社」というイメージで、一般庶民の私からすると、どちらかというとマイナスに近かったかも知れません。
しかし、「職人を大切に想う気持ち」や「馬具作り時代から受け継いでいる商品へのこだわり」、「それを作っている職人の想い」を知ると、不思議なことに好きになっていて、「いつかこのブランドの商品を持ちたい」という気持ちになっていました。
エルメスというブランド商品を承認欲求のために持ちたい、と思っている人も多くいると思いますが、今私が感じている感覚は、それとはちょっと違う気がします。
こういうこともあるんですね。
自分でも不思議な体験で、整理がついていない状態なのかもしれません。
この体験をもう少し重ねてみたいと思っています。
「エルメスの道」を読んで、もう一つ良かったことがあります。
それは自分の中で『愛され続ける企業のあり方の基準』ができたということです。
エルメスは1837年から始まる歴史あるブランドです。
事実として、エルメスは180年以上も事業を継続できているわけです。
それは、みんなに愛され続けているという証拠です。
なぜこんなにも長く愛され続けているのでしょうか?
それは「中(職人や社員)」と「外(顧客)」に対して、嘘偽りがない想いを伝えられていて、両者に対して高い満足を提供するための努力・研究を惜しまないからである、と今のところ考えています。
だから時代が変わっても良いアイデアが生まれるし、良いものが作れる。
たった1社の創業物語からかなり多くのヒントを得ることができました。
今はもっと他の会社の創業ストーリーを知りたい、という気持ちです。
「エルメス」の事例を知ることができたので、「エルメス」を基準に、他のパターンを知ったり、同じ軸だとしてもその本気度によってどんな違いが生まれるのかなどを調べてみたいですね。
ポイント
- ブランドを好きになる体験ができた
- 愛され続ける企業のあり方の基準を持つことができた
- 他の事例との比較ができるようになった
「エルメスの道」は、こんな人にもおすすめ!
今までに「ブランドを好きになったことがない」、「会社の創業物語に興味を持ったことがない」、という方にこそぜひ読んでもらいたい本です。
私のように不思議な体験ができるかもしれません。
そして、この体験はマイナスなものではな決してなく、むしろプラスだと思います。
いつのまにか「好き」になっているという、行動変容を体験してみませんか?
あとがき
エルメスのWebサイトを見たことはありますか?
もしよければ一度見てみて下さい。
独特の世界観(主にムービー)、訪問者を楽しませる企画(「エルメス・オン・ステージ」や「エルメスの夢見る花火」」)などがあります。
なんというかWebサイトにも”ホスピタリティ(人を喜ばせようとする心)”が感じられるんです。
私個人としては、長期的に考えると、最低限のUXは担保した上で、こういったホスピタイリティというか、アート、エンタメの要素が入り混じったものがじわじわ来ると感じています。
短期の費用対効果で考えたときには絶対に通らないような企画を実行できるところが、差別化を図れるという感覚もあります。
関連サイト エルメスの公式サイト
これまでは「ロジックがあればOK」みたいに考えていましたが、最近はちょっと違ってきています。
このように考えるようになったのは、アカツキという会社の社長が書いた「ハートドリブン」の影響なのかもしれません。
ロジックももちろん大切ですが、そこに頼り切ってしまうと、どこかでつまづくような気がしています。
「不合理の合理」を意識していないと、永遠にスランプから脱出できない、そんな気がします。
おそらくですが、エルメスもロジックに最適化された対策ばかりをしていては、ここまで続いてはいないのではないでしょうか。
たとえば、KPIを意識して最適化を図ろうとするけれども、なぜか成績がどんどん下がってしまう…という現象になったら要注意です。
「不合理な部分」を軽視しすぎているかもしれません。
この当たりをもっと詳しく知りたい方は、「ハートドリブン」を読んでみて下さい。
すごい納得感が得られると思います。
「エルメスの道」の書評はいかがでしたでしょうか?
私は1冊本を読むと、そこから派生して読みたい本がすごく増えます。
たとえば、「エルメスの道」を読んだ後には、他社の「創業物語」や「ブランドの作り方」などの本が読みたくなりました。
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