著者について
『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』の著者である印南 敦史さんは、人気Webメディア「ライフハッカー」の書評を担当しています。
1日1冊以上の本を読み、週に5本の書評を生み出しています。
「ライフハッカー」の書評を担当されたのが、2012年8月からとのことですので、もう7年以上も継続していることになります。
今回は、印南さんが実践している「読書と書評を継続するコツ」を紹介します。
遅読家でも1日1冊以上の読書を継続できる読書術
この本は「伝わる文章を書く技術」とありますが、印南さんが実践している読書術についても書かれてあります。
意外なことに、「ライフハッカー」の書評を担当するまで、印南さんは読むスピードが非常に遅かったそうです。
しかし、ふとした気づきのおかげで、読書スピードは一気に改善されました。
「書かれていることすべてを頭に叩き込まなければならない」というような強迫観念から逃れることのできなかった私の価値観を一蹴することになり、そこからは読書速度は一気に速まったのです
(STEP1 プロ書評家が教える読書術・時間術 より)
いったい何に気づいたのか。
別に隅から隅まで読まなくても、内容は把握できる
(STEP1 プロ書評家が教える読書術・時間術 より)
ソイエバブログでは、これまで多くの読書術を紹介してきましたが、ご多分にもれず、印南さんも「隅から隅まで読まない」という「つまみ読み読書術」を実践されていました。
また、印南さんは本を手にしたときにやることが3つあるとのこと。
1.奥付(末尾の、著作者、発行者、発行年月日などが記載されたところ)のチェック
2.「まえがき」「はじめに(序文)」を読む
3.目次を見る
(STEP1 プロ書評家が教える読書術・時間術 より)
「まえがき」「はじめに(序文)」を読む理由としては、「その本のエッセンスが凝縮されている」部分だから、だそうです。
書籍における「まえがき」部分は、「買われるか」か「買われないか」を左右する非常に重要な部分であるため、著者や出版社が一番力を注いでいる部分といっても過言ではありません。
「伝える」にこだわった書評の書き方
私が印南さんの書評の書き方で印象的だったのは、
「表現する」のではなく、「伝える」
(STEP3 大切なのは「伝える」こと より)
という部分を徹底的に追求した考え方です。
ライターといえば「自分を表現してなんぼ」というイメージを持っていた私にとって、こういう考え方もあるんだという、新たな気づきになりました。
なぜ、「伝える」にこだわったか。
それは、「ライフハッカー」というWeb媒体の役割を意識したからです。
ライフハッカーの読者層は25歳から34歳を中心としたビジネスパーソン。
つまり、仕事の空き時間や通勤途中で読む人が多く、時間に余裕がない人。
そのため、「ライフハッカー」の書評は、下記のことを徹底的に考えられて書かれています。
なかなか時間をとることができないビジネスパーソンが、効率的に情報収集できる
(STEP2 読み手の視点に立つ より)
時間がない人向けの書評ということで、一つのテクニックが上手に使われています。
それが「引用」です。
「ライフハッカー」の書評では、あえて「引用」が多く使われています。
読者の視点にたった場合、引用を用いたほうが具体的であり、短時間での情報収集に効果的、そして一部を抜き出すことにより、結果的には全体への関心を高めることにもなるはずだから
(STEP2 読み手の視点に立つ より)
たしかに、引用が使われた書評の場合、「本の著者の意見」と「書評家の意見」との区別がつきやすく、伝わりやすいと感じます。また「引用」は「著者の表現方法そのまま」ですので、伝達手段として考えたときに、誤解が生じにくい効果的な方法だと感じました。
「ライフハッカー」の書評は下図の構成になっています。
書評を書く際に役立つ「まとめる」テクニック
印南さんは書評を書く際に、以下の順序で考える(思考のプロセス)そうです。
- 柱(テーマ)を決める
- 動機(なぜそのテーマで論じたいか)
- 全体像(柱と動機がどう見えるか冷静に俯瞰)
- 対比(Aについて論じたいとき、Bと比較してみる)
- 結論(読後感を読者に提供できるように意識する)
「どのようにして書評の構成を作ればいいのか分からない」場合は、この思考プロセスが役立つでしょう。
実際に、私は今、書評のような記事を書いていますが、この思考プロセスに当てはめて考えてみると、足りていない部分があることに気付くことができました。
書評の作成に「時間をかければいいわけではない」
「ライフハッカー」の書評の文字数は約2,000文字。
決して長い文章というわけではありませんが、印南さんの場合、読書時間を加えたとしても、たった2~3時間程度で書き上げてしまいます。
この驚異のスピードの秘訣について、紐解いていきます。
印南さんの作業工程
- 読書
・精読の場合は1~3日(1週間かけることも)
・斜め読みの場合は30分から1時間程度。 - 必要事項の入力
・引用する小見出しの選定 - 執筆
・一気に書き上げる
・余計なことは考えず、まずはひとつの文章として完成させる - 推敲
・一番重要な部分
作業工程を見てみると、引用することを前提としていることが分かります。
どの部分を引用すると、「読者に分かりやすく伝わるか」。
この部分を考えながら読書をし、書評の構成を考えていくとよいでしょう。
無駄な時間をかければかけるほど、その文章からは鮮度が失われていき、表現もお粗末になるものです。
(STEP4 「読ませる」文章の書き方 より)
印南さんによると、文章にも鮮度があり、一気に書き上げた方がいいと言います。
最初の段階でパーフェクトを目指すのではなく、書いてみてから修正するほうがいいのです。そしてそれは、無駄な時間を短縮することにもつながっていきます。
(STEP4 「読ませる」文章の書き方 より)
どうやら、驚異の執筆スピードの秘密は「とにかくまずは一気に書き上げる」ことのようです。
”書く前にあーだこーだ、考えすぎて筆が進まないよりも、とにかく一気に書き上げてみる。
あとで修正はいくらでもできる。”
という、心構えで取り組んだ方がよさそうです。
実際、私は本を読んで感じたこと、伝えたいことを文章でまとめようとすると、いろいろ考えすぎてしまい、文章を書くのが億劫になってしまっていました。
しかし、この考え方を知り「まずは下手くそでもいいから書いてみよう」という気持ちになり、「文章を書く行動」に移ることができました。
まとめ
書評を書く上で、テクニックだけではなく、本の選定方法、読書術、取り組む際の考え方(メンタル面)までも学べる本でした。
毎日、ハイクオリティな書評を生み出している人の言葉は、すーっと入ってきます。
書評を続けることは、細かいことは考えず「とにかくまずは一気に書き上げる」ことです。
ブログで書評を書いてみたいけど、どのようにして書いていいのか分からないという人にはお勧めの本です。
著者の印南敦史さんの書評を読んでみたい、という方は「ライフハッカーの書評」サイトから読むことができます。
関連サイト 「ライフハッカー 書評」サイト
ちなみにですが、私はこの本をamazonの「kindle unlimited(書籍読み放題サービス)」で読みました。
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